「もしもし、手塚治虫です」— アニメ界の巨匠からの突然の電話が、アンパンマンの作者、やなせたかしさんの人生を大きく変えたことをご存知でしょうか？ NHK連続テレビ小説「あんぱん」でも描かれた、二人のクリエイターの知られざる物語に迫ります。
「漫画の神様」からの依頼
やなせたかしさんが手塚治虫さんの劇場アニメ「千夜一夜物語」（1969年）のキャラクターデザインを手がけたのは、意外にも遅咲きでした。当時、脚本や作詞など多岐にわたる分野で活躍していたものの、漫画家としての代表作はまだありませんでした。そんなやなせさんのもとに、手塚さんから突然電話がかかってきたのです。
9歳年下の天才からのオファー
手塚治虫さんは、やなせさんの9歳年下。17歳で商業デビューし、「新宝島」「ロストワールド」などのストーリー漫画で大成功を収めました。「ジャングル大帝」や「鉄腕アトム」「リボンの騎士」と、その後もヒット作を連発。まさに「漫画の神様」と呼ばれる存在でした。
遅咲きの漫画家と神様の出会い
一方、やなせさんは48歳で週刊朝日の「懸賞漫画」に挑戦し、「ボオ氏」が一等入選したばかり。自伝によると、そんな状況下で手塚さんからの電話を受けたやなせさんは、当初冗談だと思ったそうです。しかし、これがきっかけとなり、二人の間には深い絆が生まれました。
「千夜一夜物語」とアンパンマン
手塚さんの依頼を受けたやなせさんは、「千夜一夜物語」のキャラクターデザインで見事な才能を発揮。この経験が、後のアンパンマン誕生にも大きな影響を与えたと言われています。アニメ界の二人の巨匠を結びつけた、感動的なエピソードです。
二人の出会いは、単なる仕事上の関係を超え、互いの創作活動に刺激を与え合う特別なものでした。手塚治虫という天才が、やなせたかしという才能を見抜き、引き出したこと。そして、その出会いが、日本の漫画・アニメ史に輝く作品を生み出したこと。この物語は、私たちに創造の可能性と、人との出会いの大切さを教えてくれます。