電気自動車(EV)の普及に不可欠なレアアースを巡り、日本の自動車メーカーや素材メーカーが技術革新を加速させています。中国政府による輸出規制強化を受け、資源依存からの脱却を目指す動きが活発化しています。
日産自動車、早稲田大学とレアアースリサイクル技術開発
日産自動車は早稲田大学と共同で、廃車となったEVのモーターからレアアースを回収・リサイクルする技術開発を進めています。電炉にモーターを投入し、添加剤を加えて約1500度まで加熱することで、鉄と分離したレアアースを回収する計画です。大量のモーターを効率的に処理し、レアアースの回収量を増やすことが実用化に向けた課題となっています。日産自動車は2030年頃の実用化を目指しています。
プロテリアル(旧日立金属)、レアアースゼロ磁石を開発
プロテリアル(旧日立金属)は、EV駆動用モーター向けにレアアースの「重希土類」を使用しないネオジム磁石を開発しました。重希土類は中国に偏在しており、供給リスクが懸念されています。プロテリアルの新磁石は、サプライチェーンの安定化に貢献すると期待されています。既に量産工場から試作サンプルが出荷されています。
大同特殊鋼、高機能磁石の製造ライン増設
大同特殊鋼は、ハイブリッド車(HV)やEVの駆動モーターに使用する高機能磁石の製造ラインを増設します。完全子会社のダイドー電子に約15億円を投資し、磁石の生産設備を導入。2030年度までに総額50億円を投資し、生産能力を強化する計画です。同社は独自の「熱間加工磁石」技術を確立しており、重希土類を使用せずに高磁力・高耐熱性を実現しています。熱間加工磁石を活用したHV向けモーターの試作では、従来比で最大トルクが約13%向上、耐熱性も約7%高まりました。
まとめ
レアアースを巡る国際情勢が緊迫する中、日本の技術力が活路を開いています。自動車メーカーと素材メーカーが連携し、リサイクル技術やレアアースフリー技術の開発を加速させることで、EV産業の持続可能な発展に貢献することが期待されます。