夏の旅行シーズン、飛行機を利用する人も多いでしょう。しかし、航空業界は世界のCO2排出量の2～3%を占めており、環境への影響は無視できません。そこで注目されているのが、持続可能な航空燃料（SAF）です。EUでは今年からSAFの利用が義務付けられ、2050年までに70%まで引き上げる目標が掲げられています。
SAFとは？夢の燃料に暗雲
SAFは、化石燃料以外から製造される燃料の総称です。電気自動車のように、大型旅客機を電気で動かすことは技術的に難しいため、SAFは脱炭素化の重要な鍵となります。しかし、ロイターの調査によると、SAFの製造プロジェクトはまだ初期段階にあり、十分な燃料を生産できていないのが現状です。
シェルの巨大プロジェクト頓挫
さらに悪いニュースがあります。石油大手のシェルが、ヨーロッパ最大級となるSAF製造施設の建設を中止すると発表したのです。ロッテルダムに建設予定だったこの施設は、年間82万トンのSAFと持続可能なディーゼルを生産するはずでした。シェルの発表によると、プロジェクトの競争力不足とコスト高が理由とのことです。
EUの目標に暗雲
シェルのプロジェクト中止は、EUのSAF導入目標にも大きな打撃となります。EUは2025年からSAFの利用を義務付け、2035年には20%、2050年には70%まで段階的に引き上げる予定です。SAFは、廃油や植物油などの廃棄物から製造されます。2030年からは、水素とCO2から製造される合成燃料（E-Fuel）の利用も義務付けられます。
今後の展望
シェルの撤退は、SAFの普及に大きな課題を突きつけました。しかし、SAFは航空業界の脱炭素化に不可欠な技術です。政府や企業は、SAFの研究開発や製造を支援し、コスト削減と生産量増加を目指す必要があります。消費者の意識向上も重要です。環境に配慮した航空燃料の利用を促進するため、航空券の価格にSAFのコストを反映させるなど、様々な取り組みが求められます。
- SAF導入の遅れは、気候変動対策に影響を与える
- 技術革新と政策支援が不可欠
- 消費者の理解と協力が重要