かつて「ヨーロッパの優等生」と謳われたドイツ経済が、今や構造不況の真っただ中にあると報じられています。その背景には、国際競争力の急速な低下という深刻な問題が存在します。
労働コストの高さが競争力を阻害
ドイツ経済研究所(IW)のレポートによると、ドイツの製造業における労働コストは、他の先進国と比較して2割も高い水準にあります。2024年時点での単位労働コストは、先進27カ国の平均値を22%も上回っており、これはドイツの国際競争力を大きく損なう要因となっています。
過去10年間の推移を見ると、コロナ禍以前からユーロ圏全体の伸びを上回っており、賃上げによる労働分配の強化が進められてきました。2015年には最低賃金制度が導入され、労働者の権利保護が進んだ一方で、企業の負担増にも繋がっています。
自動車産業の人員削減が加速
ドイツの自動車産業は、特に厳しい状況に置かれています。過去1年間で5万人以上が削減され、これは業界全体の労働力の7%に相当します。背景には、中国との競争激化、eモビリティへの移行の遅れ、販売不振など、様々な要因が絡み合っています。
ドイツ産業界全体でも、人員削減が加速しており、2019年以降では約24万5000人(4.3%)が減少しました。今年第2四半期の工業売上高も2.1%減少し、8四半期連続の減少となっています。
複合的な要因がドイツ経済を圧迫
ドイツ経済の低迷は、労働コストの高さだけでなく、エネルギー価格の高騰、官僚主義、国内需要の低迷、米国との関税紛争など、複合的な要因が絡み合っています。これらの問題が、ドイツ企業の収益を圧迫し、国際競争力を低下させていると考えられます。
今後のドイツ経済は、これらの課題にどのように対応していくのか、注目が集まります。
今後の展望
- 構造改革の推進
- 技術革新への投資
- 新たな市場の開拓