北海道の知床で、ヒグマに関連する深刻な事態が相次いでいます。8月には羅臼岳で登山客がヒグマに襲われ死亡する事故が発生し、観光地としての知床の存続に大きな影を落としています。
事故前の餌付け疑惑
事故調査の続報によると、事故の約2週間前、岩尾別地区でヒグマへの餌付けが疑われる事案が発生していたことが判明しました。現時点では、死亡事故を起こしたヒグマとの直接的な関連性は不明ですが、そのヒグマは以前から岩尾別地区を中心に活動していたことが確認されています。
共生神話の崩壊
世界自然遺産登録から20年を迎えた知床ですが、今回の死亡事故により、人間とヒグマの「共生神話」は崩壊しつつあります。知床半島は世界でも有数のヒグマ高密度生息地であり、保護政策によって個体数が増加してきました。しかし、近年はヒグマによる負傷事故が増加傾向にあり、人間との距離感が課題となっています。
秋以降もクマ被害の懸念
さらに、今年は東北地方でクマの主要な餌であるブナの実が2年ぶりに大凶作となる見込みです。これにより、クマが餌を求めて人里に出没する可能性が高まり、秋以降もクマによる被害が多発する恐れがあります。環境省のデータによると、4〜7月には全国で55件のクマによる人身被害が発生しており、過去10年間で最多ペースとなっています。
観光地としての課題
知床は、その豊かな自然と野生動物との共生を観光資源としてきました。しかし、今回の事故や餌付け疑惑の発覚により、そのあり方が問われています。観光客への安全対策の強化はもちろんのこと、ヒグマとの適切な距離感を保つための啓発活動や、地域住民との連携が不可欠です。
- ヒグマへの餌付けは絶対にやめましょう。
- 登山やハイキングの際は、クマ鈴やラジオなどを携帯し、自分の存在を知らせましょう。
- クマを目撃した場合は、刺激せずに静かに後退しましょう。
- 自治体の提供する情報に注意し、安全な行動を心がけましょう。
知床が再び安全で魅力的な観光地となるためには、関係機関が協力し、早急な対策を講じることが求められます。